コミュニケーション・ラボ
地代所明美の「ハッピー・タッチング」コラム バックナンバー
第3回
「書き換え可能」な「私」。
あれやこれやでどたばたな毎日で、コラムのアップが遅くなってしまいました~。
私、地代所明美は、タッチング・セラピストとしての活動の他に、マーケティングプランナーなるものもやっています。
生活者と企業の橋渡し役として、商品やサービス、コミュニケーションについて、様々な研究・分析をし、提案をしていく・・・というような仕事です。その仕事の関連で、古くからおつきあいのある家電メーカーから、
「ホームページで、子育て中のママを応援するコーナーを作りたいんだけど・・・」との相談を受けました。
そこで、まずは社内のママ社員の方々に集まってもらって、あーでもないこーでもない、と知恵を出し合う座談会を開くことにしました。
参加者全員が、家事に育児に仕事にとフル稼働中の身、アイデアを出し合う会のはずが、お互いの状況報告やぶっちゃけトークで大盛り上がり。
いくら会社の理解があってパパの協力があったとしても、すっごく大変な毎日には変わりはないですものね。
みんな、うんうんとうなづきあい、共感し合い、励まし合い・・とテーマからは大きくそれながらも、とってもあったかい雰囲気。進行役のはずの私も、積極的に脱線トークに参戦(笑)。そんな中、参加者の一人のママから、
「とにかく、時間がな~い!自分のことにかまってなんかいられない!」
との発言があり、それを機に不満トークが大爆発。
「美容院にちゃんと定期的に行きたい」「ネイルサロンとかエステだって行きたいんだけど、全然無理!」
に始まり、
「子どもが生まれる前は習い事もたくさんしていたのに」
「子どもが生まれる前は夫と二人で食事に行ったりできたのに」
「資格試験を受けたいけれど、勉強する時間がない」
「やっぱり、子育てって結局自分を犠牲にしてやってるって感じ」
「以前のように自分磨きにがんばりたくても、子どもがいたらできないよね」
などの声が飛び交い、やや重いトーンが会を包みました。
「そうかな?」
と口を開いたのはSさん。3歳と1歳のお子さんを持つ、社歴13年の営業ウーマン。
5年ほど前、Sさんとよくお仕事をご一緒する機会があったのですが、その頃のSさんは、「超」がつくほどのバリバリの仕事人。合理的かつ効率的に仕事を進める、有言実行の人。当時独身だった彼女は、「子どもって不条理よね」とか、「育児に費やす時間って無駄よね」と語っていました。「すべてはコントロール可能」がポリシーの彼女にとって、子どもは歓迎しがたい存在だったはず。。今回久々に会った彼女は、なんと二児のママになっていたのでした。
Sさんは、にこにこしながら言いました。
「『私』にはいろいろな側面があると思うの。だからね、そう簡単に自分を見失わないんじゃないかっていう、それくらいの自信は持っていたいなって思うのよ。『自分らしさ』といわれるものはいろいろあって、そのうちのいくつかは子供の文化と合わない・・・ということがあるかもしれないけど、でもね、『私』は書き換え可能、切り替え可能なものだと思いたいのよね。子供が楽しむことを自分も楽しむようになったり、子どもが生まれる前にはなかったものを取り入れながら、自己領域を拡大していっているって思っているんだけど、違うかな」
と。
かつては連日連夜残業続きなワークスタイルでしたが、今は育児中の時間短縮制度を利用し、できる範囲でゆるやかに仕事をしているとのこと。以前はきりりとした表情が印象的でしたが、今ではおだやかな笑顔の似合う感じ、と表情までなんだか別人のよう。
彼女の言葉にいろいろ考えさせられました。
子どもがいると制約だらけで、できないことだらけで、しなくちゃいけないことだらけで、「あの頃(独身の頃)の自分」を基準にすると、なんだか全然「だめだめな私」ってことになってしまうかもしれない。
でも、Sさんは「子どものいる私」を基準に「私」の書き換えを行ったわけです。あの頃の「合理派、完璧主義、クールビューティの仕事人」ではなく、「子どもと一緒に楽しみながら自己拡大中」ということが「Sさんらしさ」として輝きを放っています。
すてきだな、と思いました。
過去のどこか一点に基準を置いて「自分らしさ」を考えるのではなく、今から、今日から、いくらでも「書き換え可能」「切り替え可能」なんだ、と思えば、今、今日子どもと向き合っている自分が「自分」なわけで、その「自分」ができること、楽しいこと、トライしたいことが目の前にすーっと広がっていきそう、ですね!
「私」は過去ではなく、「未来」へと伸びている。そんなイメージ。
やわらかい微笑みのSさんのその言葉に、他のママたちもなんだかほんわり。「そっかー」「そういうことかぁ!」の声があがります。
そのSさん、座談会が終わった後、私のそばにきて、
「あのね、今、週に1回、お昼休みを利用して、ピアノを習ってるのよ。ピアノの弾けるお母さんってすてきかなって思って。ランチタイムをうまく活用しなくちゃ、ね!」
と教えてくれました。
「子育てビューティ」のSさんは、ランチタイムを自分のための時間として見出したようです。さすが~、Sさん!
皆さんも、「書き換え可能」で行きましょう!